飛行機の燃料が主翼に積まれている理由
こんにちは!
今回は飛行機の燃料が主翼に積まれている理由についてお話ししたいと思います。
このブログにいらっしゃる方のほとんどが飛行機好きだと思いますので、飛行機の燃料が翼に搭載されることは既にご存知だと思います。
しかし、なぜわざわざそのような方法をとるのでしょうか?
そこには以下のように3つの理由があります。
- 飛行機の重心のバランスを保つため
- ペイロード(お金になる重さ)を最大にするため
- 翼が折れないようにするため。
一つずつ解説していきたいと思います。
理由①:飛行機の重心のバランスを保つため
まず一つ目の理由は「飛行機の重心のバランスを保つため」です。
飛行機の重心を担う3大要素は乗客・積荷・燃料といわれております。そして、これらのバランスが崩れてしまうと、飛行機の重心がずれてしまって大事故に繋がってしまいます。なので、飛行機が安定して飛行できるようにするために、上記の3大要素をきちんと調整しなければいけません。
もっと詳しく見ていきましょう。
飛行機のバランスを左右する上記の3大要素ですが、飛行中にその重さが変わらないものと変わるものがあります。
まずは変わらないものですが、それは乗客と積荷ですね。これらの要素は搭乗前に重心のバランスを考えた座席のアサインや荷物の積み方をしておけば、飛行中に問題を発生させる要因になることはありません。
しかし燃料はどうでしょうか?
燃料は飛行中にどんどん消費されて失われていきますよね。つまり、燃料が搭載されたタンクが飛行時間に合わせてどんどん軽くなっていくということです。
そこで、仮にもし飛行機の燃料タンクが胴体の先端かお尻にあったらどうなると思いますか?
もちろん飛行中に飛行機の重心がどんどん変わってしまうわけです。
もし飛行機のお尻に燃料タンクが搭載されていたら、飛行時間とともにお尻が軽くなって、相対的に頭が重くなって先端が沈んでしまいます。
これは非常に危険なことですよね。
だから、燃料が減っても重心が変わらないよう主翼に燃料を積むのです。
では2つ目の理由をみていきましょう。
理由②:ペイロード(お金になる重さ)を最大にするため
2つ目の理由は「ペイロードを最大にするため」です。
ペイロードとは、乗客や手荷物、貨物や郵便物などのことを指し、運んであげればあげるほどお金になるものです。つまり、ペイロードを大きくすればするほど、航空会社はお金をたくさん儲けることができます。なので、フライトプランを立てたり、航空機を設計したりする時は、このペイロードを最大にすることを目標にします。
では乗客や手荷物、貨物や郵便物はどこに積まれているのでしょうか?
それはご存知の通り、飛行機の胴体部ですよね。そのため、飛行機の胴体部は非常に貴重なスペースになっています。
ちなみにジャンボジェット機であれば100トンを超える量の燃料を積むこともあります。そのためにはそれ相応のスペースが必要になりますが、それを貴重な胴体にあててしまってはペイロードが小さくなり、お金になりません。
そこで、どこに燃料を搭載しようか考えた結果、飛行機の翼になったのです。
飛行機の翼の中は、ほぼ空洞になっているわけですから、これを利用する他にないのです。
ちなみに2019年にKLMオランダ航空で「乗客を翼に乗せて運ぶ」という新たな提案がなされました。
参考:https://www.gqjapan.jp/lifestyle/article/20200907-klm-news
いずれここで書いている概念も変わっていく時代がきっと来るのでしょう。
ちなみに余談ですが、翼の中には以下の画像のような翼桁があります。
これらは翼の形を作ったり、翼自体の強度を高めてくれています。
そして、この翼桁が本来とは違うとてもいい活躍をしてくれているのをご存知でしょうか?
それは、「タンク内の燃料が急に大きく移動することを防ぐ役割」です。
飛行機が旋回したり、乱気流などで大きな揺れが発生すると、どうしてもタンク内の燃料が動いてしまいます。重心の観点からこれはあまり良いことではないので防ぎたいですよね。
そこで活躍してくれるのが翼桁です。翼桁は上の画像のように主翼の中を何分割かに区切っていますが、これらには穴が空いていて、そこを燃料が通れる仕組みになっています。ただ、穴が空いているとはいえ、何もないよりは燃料が行き来しにくくなるわけですから、タンク内で燃料が急に動くことがなくなり、飛行機の重心が大きく変わってしまうことを防いでくれているのです。
では3つ目の理由を見ていきましょう。
理由③:翼が折れないようにするため
3つ目の理由は「翼が折れないようにするため」です。
これは意外な理由ですよね。
言うまでもなく航空会社も利益を求める一つの会社です。なので前述したペイロードを最大にしようと努力するわけですが、それにともなって飛行機自体の重さが増えてしまいます。そして、その重量は全て胴体にかかるわけです。
では、それを持ち上げて浮かせてくれるものは何でしょうか?
そうです、もちろん主翼です。
主翼が頑張って胴体を浮かせようとする時、下からの空気の圧でその翼は上にしなります。
胴体が重ければ重いほどそのしなりは強くなり、あまりに強い負担がかかってしまうと、バキッと折れてしまいます(実際のところ、そう簡単に折れるようにはできてはいませんが)。
そこで対策として翼に燃料を積むわけです。翼自体の重さが増えるわけですから、上にしなりすぎないようになり、翼への負担を減らすことができるようになるのです。
まとめ
飛行機の燃料を主翼に積む理由をもう一度まとめると下記の通りです。
- 飛行機の重心のバランスを保つため
- ペイロード(お金になる重さ)を最大にするため
- 翼が折れないようにするため。
こんなに抜け目のない理由があったなんてびっくりしませんでしたか?
飛行機一つを安全に飛ばすために、技術者は一生懸命工夫をされているのだなと驚かされます。
とは言え、これだけではありません。
飛行機にはまだまだ面白いことがたくさんあります。
次回以降の記事でも色々と紹介していきたいと思いますのでぜひ楽しみにしてくださいね!
では今日はここまでにしたいと思います。